家族信託の受託者が亡くなったら?後継受託者の交代手続きを解説
家族信託を利用中の方、あるいはこれから利用を検討している方にとって、「財産を管理する人(受託者)に万が一のことがあったらどうなるのか」という点は大きな不安要素ではないでしょうか。
「もし受託者が亡くなってしまったら、信託は終わってしまうの?」「受託者が認知症になって管理ができなくなったらどうすればいい?」といった疑問をお持ちの方も少なくありません。
受託者が交代する場面では、信託契約の定めやその時の状況に応じて、必要となる手続きが大きく異なります。今回は、家族信託の受託者交代が必要になるケースと、後継受託者(次に財産を管理する人)へのスムーズな変更手続きについて、司法書士の視点から分かりやすく解説します。
受託者の交代が必要になる主なケース
家族信託の運用期間中に、当初定めた受託者から別の人へ管理を引き継ぐ必要が生じるケースには、主に以下のようなものがあります。
受託者の死亡
受託者が亡くなった場合、原則として受託者としての任務は終了します。このとき、信託契約の中に「後継受託者」が指定されているかどうかによって、その後の流れが大きく変わることになります。
受託者の認知症などによる判断能力の低下
受託者が認知症などにより判断能力を喪失した場合、適切な財産管理を行うことが難しくなります。この場合も受託者の任務が終了する事由(きっかけ)となり得ますが、客観的な判断能力の低下をどのように証明するか、また交代をスムーズに進めるための規約が契約書に盛り込まれているかどうかが実務上のポイントとなります。
受託者の辞任
受託者が高齢になった、または病気やケガなどで体調を崩したなどの理由により、自ら「受託者を辞めたい」と希望することもあります。辞任にあたっては、信託法に基づく手続きや、信託契約書であらかじめ定められた辞任のルール(合意や通知など)に沿って進める必要があります。
後継受託者への変更手続きと備え
受託者の交代が発生した際、具体的にどのような手続きや対応が必要になるかを整理します。
1. 信託契約書における「後継受託者の指定」の有無を確認
最も重要なのは、当初作成した信託契約書に「後継受託者」があらかじめ指定されているかどうかです。
- 後継受託者の指定がある場合
契約書の定めに従い、新受託者が就任を承諾することによってスムーズに交代手続きを進めることができます。 - 後継受託者の指定がない場合
信託法に基づき、委託者(財産を預けた人)と受益者(財産から利益を得る人)の合意によって新たな受託者を選任するなどの手続きが必要です。もし合意が難しい場合や、関係者がすでに他界しているなど個別事情によっては、家庭裁判所へ新受託者の選任を申し立てる手続きが必要になるケースもあります。
2. 不動産の名義変更(変更登記手続き)
信託財産に自宅などの不動産が含まれている場合、受託者が交代したことに伴い、法務局で不動産の名義(受託者の氏名)を新受託者へと変更する登記手続き(受託者更正の登記や信託登記の変更など)を行う必要があります。
3. 金融機関での口座手続き
信託財産を管理するための専用口座(信託口口座など)について、口座名義を新受託者に変更する、あるいは新受託者名義の口座を新たに開設して資金を移し替えるなどの手続きが必要です。金融機関によって取扱いや必要書類が大きく異なるため、事前に確認をとりながら進める必要があります。
家族信託の受託者交代に関するFAQ
Q. 受託者が亡くなったら、信託は自動的に終了してしまいますか?
いいえ、受託者が亡くなったからといって、信託がただちに終了するわけではありません。後継受託者が速やかに就任すれば信託は継続します。ただし、新たな受託者が決まらない(不在の)状態が1年間続くと、信託法に基づき信託が強制的に終了となる規定があります。そのため、早めに後継者を決める手続きを進めることが大切です。
Q. 後継受託者として指定されていた人は、必ず就任しなければなりませんか?
いいえ、後継受託者として契約書に名前が記載されていても、本人の承諾がなければ受託者に就任することはできません。そのため、信託契約を締結する段階で、将来受託者を引き受けてくれるかどうかをあらかじめ本人と十分に話し合っておくことが極めて重要です。
まとめ
家族信託は、一度契約を結んで終わりではなく、何年、何十年と続く大切な財産管理の仕組みです。受託者に万が一のことが起きた場合でも、事前に「後継受託者」を適切に指定し、手続きの流れを想定しておくことで、ご家族の財産管理が途切れるのを防ぐことができます。
当事務所(井関司法書士・行政書士事務所)は、東京都武蔵野市吉祥寺にて、家族信託の設計から、万が一の際の後継受託者への変更手続き、不動産の変更登記まで、皆さまのご状況に合わせてきめ細かくサポートしております。なお、親族間で万が一争いが生じてしまっている場合や、相手方との交渉・裁判所での調停等が必要な場合は、弁護士へのご相談が必要な場合もございます。まずはご自身の状況がどのような手続きに該当するのか、お気軽にご相談ください。
